:ターラー・コーエン『アメリカはアートをどのように支援してきたか』


拙訳のタイラー・コーエン『アメリカはアートをどのように支援してきたか』(ミネルヴァ書房が書評に取り上げられました。
以下、一部を抜粋します。全文は紙面をご覧ください。


日本経済新聞 2013年9月22日
朝日新聞 2013年10月13日 http://book.asahi.com/reviews/index.html


(1)朝日新聞(抜粋)

芸術支援のために庶民の税金は投じられるべきか。
(略)
「戦闘機一機の値段と比べれば文化は安上がりだ」「文化は国や地域の威信を高める」とは芸術愛好家や批評家の決まり文句だが、審美的価値は経済的価値の前では決め手を欠きがち。
本書はその両者を和解させようとする試みである。
(略)
かたや日本。経済的価値しか顧みない「事業仕分け」の光景に驚愕した海外の芸術関係者は少なくない。
東京五輪開催を控え、世界を魅了するような画期的な文化政策は打ち出せるか。
そのための頭の体操としても有益な一冊だ。


(2)日本経済新聞(抜粋)

…芸術文化は支援せねばならぬという人がいる一方、消費者ニーズと合わないものは廃れても仕方ないという意見もある。本書では、経済学者が中立的な立場で両者の折り合える点を探る。芸術助成のあり方を考える上で著者が重視するのが「分散化論」と「威信の議論」だ。
(略)
本書で紹介されるのは米国の事例だが、文化がグローバル化した今、わが国の芸術支援のあり方を考える上でのヒントも得られるだろう。訳者解説も丁寧で理解を助ける。


アメリカはアートをどのように支援してきたか: 芸術文化支援の創造的成功

アメリカはアートをどのように支援してきたか: 芸術文化支援の創造的成功

タイラー・コーエン『アメリカはアートをどのように支援してきたか』

タイラー・コーエン『アメリカはアートをどのように支援してきたか:芸術文化政策の創造的成功』(ミネルヴァ書房、2013年8月刊行予定。Tyler Cowen, 2006, Good and Plenty: The Creative Successes of American Arts Funding. Princeton University Press.)


アメリカはアートをどのように支援してきたか: 芸術文化支援の創造的成功

アメリカはアートをどのように支援してきたか: 芸術文化支援の創造的成功


目次
第1章 対立する二つの視点
第2章 間接的な助成金――アメリカ・システムの特質
第3章 直接的な助成金――それらは保守的すぎるのか?
第4章 著作権と分散化したインセンティブの未来
第5章 美しくてリベラルな未来に向けて
http://www.minervashobo.co.jp/book/b114563.html


翻訳した本が刊行されます(8月刊行予定)。
「Irregular Economist 〜hicksianの経済学学習帳〜」さんに紹介していただきました。
http://d.hatena.ne.jp/Hicksian/20130728#p1


訳者解説「タイラー・コーエンの文化政策学――芸術とイノベーションの現在と未来について」では、本書の概要と、本書で示されたいくつかの論点を最近の事例(日本の事例を含めて)に照らし合わせて考察しました。
コーエンの関心と本書の議論が、アメリカの芸術政策だけに限定されない広い射程を持っていること、日本の文化政策や文化産業の現状と今後を考えるにあたっても適用できる可能性があることを示したいと思いました。

見出しを抜き出すと、
・ライブパフォーマンスは衰退していない
・技術と芸術
・デフレ経済と芸術家への支援

(1)ライブパフォーマンスは衰退していない

 文化経済学や文化政策学のなかで「コスト病」という考え方があります。
 経済成長のなかで生産コストが上昇すると、労働集約型の舞台芸術は衰退する運命にあり、公的助成がないと生き残れない。生産コストの上昇を生産性の上昇で克服できないことが「コスト病」とされます。
 コーエンは、本書のなかで(別の論文でも)、この「コスト病」論を批判しています。経済成長が続くなかでも、またデジタル技術(複製文化)が普及するなかでも「ライブパフォーマンスは衰退していない」と。
 訳者解説では、音楽CDの売り上げが減少する一方で、コンサートやライブの公演数・観客動員数が増加傾向であること、アメリカでも日本でも「美術館ブーム」があるという事例を紹介しました。

(2)技術と芸術

 本書でコーエンは、イノベーションが新しい芸術の創造や芸術の多様性を後押しすると主張しています。また、別の論文(Cowen & Grier 1996)では、19世紀フランスの印象派絵画が飛躍的に発展した背景に、チューブ入り絵の具の発明や画材道具の市販などの産業と技術があったという例を指摘しています。
 これに加えて、訳者解説では、写真家ウジェーヌ・アジェの写真も芸術家を支援する産業のひとつと言えるのではないかと述べました。また、コーエンと同じようにイノベーションと芸術の生産性の関係を指摘しているものとして、ハンス・アビング『金と芸術』の議論を紹介しています。さらに、日本の例として、ボーカロイドVOCALOID)と、平田オリザ(劇作家)と石黒浩(ロボット工学者)による「ロボット演劇プロジェクト」を挙げました。
 そして、映画と技術の関係について、キアヌ・リーブスが企画製作したドキュメンタリー映画サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』(2012年)を取り上げながら、「映画のデジタル化」について考察しました。

(3)デフレ経済と芸術家への支援

 本書の第2章で、コーエンはニューディール政策を取り上げます。それは芸術家に「雇用」(と収入)を提供するという支援方法であり、アメリカの芸術支援の歴史上、最も成功した直接的支援だと指摘します。別の論文(Cowen & Grier 1996)でも、公的な雇用政策に加えて、経済成長や好景気が芸術の需要を拡大することに加えて、芸術家の家族の資産や貯蓄を増やすこと、副業による収入を生み出すことによって芸術家を間接的に支援すると述べています。
 このようなコーエンの主張に加えて、田中秀臣氏の『雇用大崩壊――失業率一〇%時代の到来』(2009年、日本放送出版協会)で述べられている「直接雇用」の意義(同書、115ページ)を紹介して、デフレ経済のもとでの芸術への支援方法のひとつとして「雇用」の提供があるのではないかと述べました。

(4)その他

 本書の議論と関連する3本の論文を簡単に紹介しています。
[1] Cowen, Tyler. 2007. “When should regions bid for artistic resources?” The Review of Austrian Economics 20, pp.1-10.
[2] Cowen, Tyler. 1996. “Why I Do Not Believe in the Cost-Disease.” Journal of Cultural Economics 20, pp.207-214.
[3] Cowen, Tyler, and Robin Grier. 1996. “Do Artists Suffer from a Cost-Disease?” Rationality and Society 8(1), pp.5-24.

[1]は「芸術は地域活性化の資源になるか」そして「それは芸術支援になるか」という問いから、芸術誘致による地域活性化の問題点と可能性を考察するもの。[2]と[3]は「コスト病」論を批判的に検討したもの。


訳者解説では紙数の都合により詳しく紹介できませんでしたので、次回以降、3つの論文の内容を紹介したいと思います。


金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか

金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか


雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

「rain town」

大学の卒業制作として作られたアニメーション作品
(2010年度京都精華大学マンガ学部アニメーション学科第二期生卒業制作作品)
http://d.hatena.ne.jp/Tete/20110310

YouTubeでも

雨が降り続ける街、少女とロボットの物語。

その街はいつからか雨がやまなくなって
人々は郊外や高台に移り住んでいった
「rain town」
人々の記憶の底に沈む
忘れられた“雨の街”へ
時折、誰かが迷い込むという…


大道芸の「ロボットのぞみ」(アニメーションではないし、こちらはロボットが心を持つというストーリーだけれども)を思い出した。
(短めのものとして以下の動画。あらびき団だけじゃなく、YouTubeには、他にもたくさん「ロボットのぞみ」の動画があります)

『マネー・マン』(出演:J・S・G・ボッグス)

マネー・マン
監督:フィリップ・ハース
1992年/アメリカ映画/56分
1994年第4回国際美術映像ビエンナーレルーヴル美術館賞(最優秀物語賞)

紙幣をアートにした男、
J・S・G・ボッグスアメリカ縦断ロード・ムーヴィ

J・S・G・ボッグスは、紙幣を精巧に描いて自分のサインを入れた後(片面しか描かれていないので、相手はそれが正規の紙幣でないことにすぐ気づく)、それを実際、額面通りの支払いに使う「取り引き(Transaction)」と名付けられた活動を行なっているアーティストである。
これらの紙幣=作品は、その後彼のコレクターが使用された店に出向いて交渉の末、ほとんどの場合数倍の値段で購入し、商品やレシートとともに額縁に入れることで初めて完成品となる。
カメラは、作品で購入したヤマハのバイクにまたがり「取り引き」を続けながらアメリカを縦断するボッグスの姿をスリリングに追っていく。彼の最終目的地は首都ワシントン。彼の作品15枚を偽造紙幣として押収した財務省検察局偽造摘発部門のオフィスだった。
ボッグスは、「貨幣」という元をただせばただの紙きれを模写した作品を通して「価値」とは何かという問いを、行く先々で執拗に投げかけていく。
このドキュメンタリーは芸術と複製、そして既成の価値観に関する考察であると同時にフィクションもかくやと思われる痛快きわまるアート版「イージー・ライダー」だ。
http://www.eurospace.co.jp/artdetail.cgi?idreq=adt983332285

ジェームス・スティーヴン・ジョージ・ボッグスというアメリカの作家の話です。彼は赤瀬川源平氏と同様、ドル紙幣やポンド紙幣を模写のうえ―そして、ここからが赤瀬川氏とちがうところですが―複写機でコピーし、バーでの支払いから文房具の購入まで、実際にレジでの支払いに使おうと試みます。実は、それこそが彼の作家活動なのです。その際、最初からこころよく受けとられるということは無論ありません。裏面がなく、指紋と一緒にボッグスのサインが入っているから、本物のお金に見まちがえることはないし、だとしたらますます、そんなものは受け取れないからです。ところで、ここからがボッグスの挑戦というか、作家活動の真骨頂なのですが、彼は、おまえは受け取らないと言うが、この、よくできた「お札の絵」には本当になんの価値もないのか。お札としては無価値かもしれないが、絵としてならばどうか、もしおまえが絵としてのこのお札になにがしかの価値を認めるのであれば、貨幣としてではなく一枚の絵として、いま私が支払うべき対価に当ててはもらえないか―そう、説得するのです。
椹木野衣『反アート入門』(2010年、幻冬舎)pp.197-198)


この映画はVHSで販売されていたが、現在は品切れ(http://amzn.to/hLMBEi)。
DVDでも再発もない様子。


反アート入門

反アート入門

フランスの映画館入場者数

「10年の映画館入場者数、1967年に次ぐ歴代2位に(フランス)」

JETROの「日刊 通商弘報」より(2011年2月1日)
http://www.jetro.go.jp/biznews/europe/4d463a79b3718

2010年の映画館入場者数は前年比2.7%増の2億649万人と、1967年に次ぐ歴代2位を記録した。デジタル3D映像の上映可能な映画館の増加が入場者数を押し上げた要因の1つになっている。また、映画製作数も前年から31本増え、史上最多の261本になった。


日本の2010年の入場者数は、174,358千人(2009年は169,297千人)。
公開本数は、邦画308本、洋画408本。
映画館スクリーン数は、3412。*1

*1:日本映画製作者連盟 http://www.eiren.org/toukei/index.html

バンクシー『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』


 アカデミー賞にノミネートされたバンクシードキュメンタリー映画が2011年4月から公開されることになった。東京都写真美術館(恵比寿)や渋谷シネマライズなどで。
配給はアップリンク


公式サイト → http://www.uplink.co.jp/exitthrough/
twitterhttp://twitter.com/#!/BANKSY_movie


以前に紹介した記事
http://d.hatena.ne.jp/ishigakitakashi/20100518/p1


アメリカで公開されたときのニュース(日本語吹き替え・字幕あり)

「映画館革命」小さな映画館が、街を変える

Insideout/Tokyo Project トークセッション第二弾「映画館革命」
http://insideout3331.org/

第二弾:高田世界館×トリウッド&ポレポレ東中野×オナリ座
「映画館革命」小さな映画館が、街を変える

動画で見れる(1:42:49)


トークセッションのレポートと動画
http://www.zero-date.org/staffblog/2011/01/post-103.html

映画館という空間にはどんな可能性が秘められているのか? ふたたび映画館が地域のコミュニティになりえるのか? 小規模な映画館にしかできないことはなにか? 
日本最古の歴史を誇る「高田世界館」(新潟)、若手監督の登竜門的存在となり、映画界を影で支える「トリウッド」&「ポレポレ東中野」(東京)の 館長たちと、大館出身の映画監督・石川寛が『映画館+α』の方程式を紐解きます。

トークゲスト:岸田國昭(高田世界館館長)、大槻貴宏(トリウッド代表、ポレポレ東中野支配人)、石川寛(映画監督)
モデレーター:石山拓真(ゼロダテ/プロジェクトリーダー)